恐怖の雪山

その時、私はたった1人で雪山にいた。
正確に言うと雪山の中の1本道でバスを待っていた。
ついでにそこは海外であった。
伝えられていた時間から待つこと1時間。
さすがにあせりと不安はピークに達していた。
もうすでに夕方。
夜になったら間違いなく凍死するだろう。
人生で初めて、死の恐怖と隣り合わせにいた。
やがて遠くにヘッドライトの明かりが見えてきた。
もうなんでもいい、どこか人のいるエリアに連れて行ってもらおう。
最大限の勇気を振り絞り、そのライトに向かい大きく手を振った。
そのバスは現地の子どもたちを乗せた観光バスだった。
つたない英語で「どこか電話のある所に連れていってほしい」と伝えた。
当時はまだ携帯電話が普及していない時代だった。
最初のうち、引率者らしき男性は「席がいっぱいだから…」と渋っていたが、子どもたちが詰めて私の席を作ってくれた。
バスが動きだし、私は暖かな車内でほっとしていた。
ふと気づくと子どもたちがゲームを始めていた。
それは太い毛糸を袖口から襟元まで通し、その端を後ろの席の子がまた通し…と左右の列で競争しているものだった。
私にも「はい」と渡されたので、子どもたちに混じってしばし楽しい一時を過ごした。
そのうちバスは町外れのバスターミナルに着き、私はそこで降ろされ、無事に宿泊先のホテルに着くことができた。
本来私を拾ってくれるはずだったバスは、予定を変更して2時間ほど早く通りすぎてしまっていたらしい。
日本ではそんなことは絶対にありえない。
現地の子供たちとのふれあいは楽しかったが、おそらく二度とない、一生忘れない体験であろう。
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